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こんにちは!カフェではコーヒー以外にもなんだかんだ頼んでしまうYUKIです。
今回は八谷紬先生の「夕星の下、僕らは嘘をつく」をご紹介いたします。
あらすじ
高校生の「晴」は他人の言葉に色が見える特殊能力を持っています。
言葉の色にはそれぞれ意味があり、本音や嘘、喜びや怒りがわかってしまいます。
両親との不仲や彼氏と親友の裏切りにより、不登校になった晴は心を許せる京都の叔母の元へしばらく滞在します。
その地で出会った言葉に色が見えない男の子「湊」は、成仏できない男の子「浪」に自分の体を譲っていたのでした。
「浪」を成仏させるために晴は、慣れない外の世界へと踏み出していきます。
こんなこと思ってたらぜひ読んでみて!
現状をどうにかしなきゃと思いながらも動けない
「夕星の下、僕らは嘘をつく」の主人公「晴」は、他人を信じることができない状況に陥っています。
愛を注いでくれない両親や、自分を信頼してくれない彼氏や親友。
そんな人たちに囲まれていた晴は自分を守るために殻に閉じこもります。
晴は叔母の家に滞在してからも、自分を守るために外部からの刺激をなるべく取らないように努めますが、「浪」を成仏させる過程で少しずつ外に顔を向けるようになります。
外部からの刺激は時に自分を傷つけますが、同様に自分を癒してもくれるのだと思います。
勇気を出して、外に踏み出し自分の居場所を見つけていく晴はだんだんとたくましく思えてきます。
読んでみて気づいた魅力
生々しい感情の動き
こんなにも人間の心の内面を丁寧になぞるように描いていることに驚いていました。
晴が両親からかけられた言葉、親友や彼氏からのメッセージ、浪やその友人たちからかけられる言葉すべてに対して、どんな色がついていて、そして晴がどう感じたのか生々しく書かれています。
だからこそ深く感情移入してしまい、こちらまで両親からの言葉に傷つけられ、浪やその友人たちの優しい言葉に救われます。
読了した方と語りたい話 ※ネタバレを含みます
※ここからは今作を読まれた方とこんな話をしたいなと思い書いています。
※ネタバレを含みますので、読了されてから読むことをおすすめいたします。
見えることとわかることは違う
「晴」ははじめ「黄色(嘘)=悪、「緑色(本音)=正義」と思っています。
笑顔で嘘をつく人たちに嫌悪感を抱き、ぶっきらぼうでも本音を言ってくれる人が信頼できると考えています。
しかし、「浪」の母親が発した言葉「養おうと思ってもらっていたのに」という言葉が緑色に見えたとき、その考えは変わったのでしょう。
私個人としてもこんなに残酷なシーンはあまり見たことがなく、やるせない気持ちになりました。
しかしこのシーンによって、血のつながりよりも自分を見てくれる人の大切さが浮き彫りになったのだと思います。
一緒にいる時間が長いからこそ、一度信じている存在だからこそ、信じ続けたい気持ちがあるのにも関わらず晴には、信じたい気持ちを残酷にも打ち壊す力を持ってしまっていました。
目を背けたい真実を直視せざるを得ない状況で、周りの愛情に支えられながら踏み出した晴は本当に逞しいと思いましたし、その過程を余すことなく丁寧に描き切ったことに感動しました。